珈琲イメージ

お気に入りの珈琲店と彼の思い出

社会人になり、お付き合いをするようになった彼が、とてもコーヒーの好きな人でした。
朝、目が覚めたら、まずコーヒー。
その日の気分で、エスプレッソ、カプチーノ、カフェオレとエスプレッソマシーンで丁寧に入れる姿が印象的でした。
家庭用のエスプレッソマシーンを初めて見る私に、マシーンにはパウダー専用とポッド専用、両方使える兼用タイプなどいくつかの種類があること、エスプレッソだけではなくレギュラーコーヒーや温かいミルクを入れたカフェオレなど様々なバリエーションを楽しめるマシーンがあることを教えてくれました。
彼の持っているマシーンは、スタイリッシュなシルエットがとても美しく、私は彼がコーヒーを入れている間、その姿をずっと見ているのが好きでした。
彼は、モカ、キリマンジャロ、マンデリン、ブルーマウンテンなど豆にもこだわりがあり、鮮度や品質で味が随分変わってくるのだということを楽しそうに話してくれました。
ミルクと砂糖をたっぷり入れないとコーヒーが飲めなかった私に、美味しいコーヒーがどういうものかということを教えてくれたのが彼でした。
週末になると、二人のお気に入りの珈琲店によく出かけました。
狭い路地の少しわかりにくい場所にあったその店は、照明を落とした落ち着いた雰囲気で、いつも心地よく私たちを迎えてくれました。
口数の少ないマスターが入れてくれるコーヒーは、苦味がなくスッキリとしていて、とても美味しかったことをよく覚えています。
私はいつも自家製チーズケーキを一緒に注文していました。
チーズのまろやかさとコーヒーがよく合って、お気に入りの組み合わせでした。
その頃から彼は、今の会社を辞めて、調理師専門学校に行きたい、調理師免許を取得して料理人になりたいと言うようになりました。
休みのたびに料理をし、料理に合うコーヒーを入れることが趣味だった彼は、その1年後に会社を辞め、調理師専門学校に入りました。
調理師本科のカフェクラスで、日本・フランス・イタリア・中国など幅広い料理の習得を目指し、同時にコーヒーに関する知識も学んでいました。
カフェクラスなので、カフェメニューやアレンジなど将来カフェを開くのに必要な知識も合わせて学んでいるようでした。
彼は専門学校に入ってから忙しくなり、あまり会う時間がとれなくなりましたが、忙しい合間を縫って二人で会う場所は、決まってあの珈琲店でした。
美味しいコーヒーにチーズケーキ、カウンター越しに並べられた様々なブランドの華やかなカップを見ると、心が和みました。
調理師専門学校を無事に卒業した彼は、今、イタリアンレストランで働いています。
場所柄、イタリアの方もよく訪れるというそのレストランは、食事だけではなくエスプレッソも美味しいと評判です。
彼は、そこで料理の基本をしっかりと身につけ、いつか自分のお店を持ちたいそうです。
私と彼の憩いの場であったあの珈琲店のような店を、いつか彼が持つことができたらこんなに嬉しいことはありません。
コーヒーは苦くてあまり好きではないという人にも、コーヒーの美味しさを知ってもらえるような店作りができたらいいと彼は言っています。
私は今日も家に帰ったら、エスプレッソマシーンで美味しいエスプレッソを入れて、彼と一緒に飲もうと思います。

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